あちらをたてればこちらがたたず 詠田トキ子

“今春の大型連休の2週間だけで「高速千円乗り放題」により、二酸化炭素(CO?)排出量が66万トンアップ”という新聞記事。さらにその66万トンは、冷房の設定温度を2度高くしたり、シャワーを浴びるのを1分短くしたり、CO?を1日1キロ減らす地道な省エネ努力を、180万人が1年間、積み重ねた量に相当する、とあった。
日頃から、様々なところで、身近な省エネを唱えている私にとって、この記事はショックだった。
国は、温暖化防止のためにと、公共交通機関の利用を声だかに提案しているのに、なにをやっているんだか。
景気浮揚の方策として、このようなことを考えたのだろうが、「あちらをたてればこちらがたたず」。
景気浮揚でやったことが、一方では大きな環境問題を引き起こしている。
えてして、環境問題を解決することと、景気とはうらはらのところがある。
五十年先の日本も含めた地球を考えた時、経済の発展のために環境問題をないがしろに考えるのはとても危険なことだと考える。景気の浮揚も大事だが、一過性の取り組みで、果たして景気が回復するのだろうか。
今回のように、高速道路乗り放題はもうごめん、と被りたい。
それよりも、公共交通機関の充実を図り、電車利用の促進を図る企画はいかがだろうか。
富山市の市長が、「二酸化炭素削減には、車に依存している現在の暮らし方を改めることが効果的」であると公言した。路面電車の導入を進め、公共交通機関の使い勝手を良くすることで、車を使わずに済むまちづくりを推進する。やがてそれが二酸化炭素を減らすことにつながるのだ。
五人の孫たちが生きる五〇年後、せめて今ほどの地球であってほしいと願う。


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